私が恋を知る頃に

碧琉side

堰が切れたように泣き出す穂海。

その声はいつものどこかで心を抑えてる声じゃなくて赤ちゃんのような素の心のままの泣き声に聞こえた。

「大丈夫だよ。もう我慢しなくていいの。自分で自分を苦しめなくていいんだよ。楽になっていいの。自然体でいていいの。誰も、それを非難しないから。素の穂海を否定しないから。」

わんわんと泣き続ける穂海の背中をゆっくり撫でる。

本当はずっとこうやって泣きたかったんじゃないかって思う。

小さい頃からずっと穂海は何もかも抑えつけられた環境で育ってきたから、きっと長い間我慢し続けて、その環境から解放されてもその呪縛から逃れられずに苦しんで。

やっと、自分をさらけ出す1歩目が踏み出せたのかな。

「好きなだけ泣きな。今日だけじゃなくて、いつも好きなだけ泣いていいんだよ。泣くことを怒る人はもういないから。泣くのは悪いことじゃない。声出して沢山泣いていいからね。いっぱい泣いて心をスッキリさせよう。」

泣きじゃくる穂海の背中をずっと一定のリズムで撫で続けるのは不思議と少しも苦じゃなかった。
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