私が恋を知る頃に

穂海side

「穂海、今日は少しお手伝いしてほしいことがあるんだ。」

そう言われたのは、次の日の朝。

回診が終わったあと碧琉くんはニコニコしながらそう言った。

お手伝い?

困惑していると、碧琉くんは笑顔のまま隠していたらしい何かを取り出した。

「じゃーん。折り紙!穂海はやったことある?」

折り紙…、小学校のとき触ったことあるくらいかな……

そう思いながら小さく頷く。

「ならよかった!千羽鶴って知ってる?折り紙で千羽の鶴を折って繋げるやつ。」

コクンと頷く。

確か、この病院でもどこかで見かけた気がする。

「それをね、今病院のみんなで作ろうって話になってるの。各病棟1つずつ千羽鶴を作るんだって。だからさ、人手が足りなくてね患者さんにも手伝ってもらってるの。それで、穂海にも手伝ってもらいたいなって。」

碧琉くんは折り紙セットから水色の折り紙を取り出して、ゆっくり折り始める。

その手つきはなんだか拙くて、慣れていないみたい。

数分で出来上がった鶴は、少ししわくちゃで羽も首も曲がっていた。

「いやあ、俺折り紙苦手なんだよね。いつも上手く出来なくてさ。看護師さんにも笑われちゃうんだよね。」

碧琉くんは何でもできると思ってたけど、意外な弱点を見つけてしまった。

「俺も時間空いたら作るようにはしてるんだけど、こんなシワシワじゃなんか申し訳なくてさ、穂海ももし良かったら作ってくれない?」

「……うん」

少し考えてから、返事をした。

私も上手くできるかわからないけど、時間はいっぱいあるし、少しだけつくってみようかな。
< 230 / 279 >

この作品をシェア

pagetop