私が恋を知る頃に

穂海side








「なんで子どもなんて産んじゃったんだろう、こんなの、誰も幸せになれないのに……」

暗い部屋そう呟く声が聞こえた。

「この子がいなきゃ良かった…、良かったの…かなあ…………わかんないや…」

その声は泣いているようにも笑っているようにも聞こえる。

「疲れた…………、なんで何もかもこんなに上手くいかないんだろう……、なんで…なんで…………。私が悪いのかなあ……、悪いのかあ…………。」

静かな部屋につぶやく声だけがやけに大きく響いてる。

「……死んじゃおうかな…………、この子を殺して私も死ねば楽になれるかな……」

そして、ふとこちらを振り向いたお母さんと目が合った。

お母さんは虚ろな目のまま、私の髪を撫でる。

「…聞いてたの?……ごめんね、こんな母親で。ごめんね、こんなに不出来な人間で。……お前も、こんな親に育てられるの嫌でしょ?………死んじゃおっか。一緒に。……大丈夫だよ、ちゃんと殺してあげるからね。」

そういったお母さんは、そのまま私をギュッと抱きしめた。

それがお母さんから貰った最後の愛情の記憶だった。
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