私が恋を知る頃に

碧琉side

もう少しで夜勤帯も終わろうとしている早朝、今日は急患も少なくついさっきまでは仮眠を取っていたが、なんだか自然に目が覚めてしまった。

少し早いが自分のデスクにつき日中の業務内容を確認したり、カルテに目を通したりもしようとも思ったが、なんだかやけに集中できなくて変だな、と思いつつ一度気分転換にコーヒーを買いに行くことにした。

いつも通り俺の好きなコーヒーが売っている自販機のあるロビーまで降りる。

この時間だから、まあほぼ人はいないのだがチラチラと俺と同じように夜勤であっただろう医師や看護師とすれ違う。

早朝だからか、みんな一様に眠たげで疲れた顔をしている。

自分含めお疲れ様、そしてまた今日も1日頑張らなきゃな、とぼんやりと考えながら自販機まで辿りつくと、まさかのコーヒーは売り切れだった。

運悪いなー、せっかく下まで降りてきたのに。

このコーヒー他に売ってる自販機あったっけな、まだ冴えきっていない頭で考えをめぐらす。

……病棟の方にあったかもしれない。

仕方ない、まあ幸い時間ならまだたっぷりあるし、歩いているうちに目も覚めるだろうから行くか。

再びエレベーターで5階に戻り、今いる外来棟と病棟を繋ぐ渡り廊下を通りいつもの病棟に来る。

患者さんとご家族が歓談するためのホールに俺の目当ての自販機があるのを見つけ、なぞにホッとしてコーヒーを購入した。

目当てのものにありつけ、長く歩いたこともありだいぶ目が覚めてきた。

ついでだからナースステーションに寄って少しカルテを見ていこうかな。

他の先生が寝ている医局より、看護師さんがいるナースステーションの方が見張られてる感じがして集中できるしな。
< 238 / 279 >

この作品をシェア

pagetop