私が恋を知る頃に

碧琉side

「女の子、大丈夫だった?」

教室から出て、まず穂海に聞かれたのがこれだった。

さっき突然、穂海の横で勉強をしていた女の子が体調を崩してしまった。

なんとか、主治医に引き継ぎ、特に問題はなかったようだけど……

「うん。大丈夫。今は、大事をとってお部屋で休んでるけど、何ともなかったみたいだよ。」

不安そうな顔の穂海の頭を撫でると、少しだけ表情が緩んだ。

きっと、不安に思ってくれていたんだな、と穂海の優しさに心が温まる。

「穂海は、どうだった?教室、怖くなかった?」

そう聞くと、穂海は少しだけ考えてから小さく頷いた。

「……最初はちょっと、怖かった。…でも、誰も何もしてこなかったし、女の子、優しくしてくれたから、よかった。」

そういうと、穂海は少し微笑んで、その表情に俺まで嬉しくなる。

「そっか、ならよかった。」

これなら、通えるようになるかな。

穂海の心が安定へ向かっていっているのを少しずつ感じてきて安心した。
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