私が恋を知る頃に
パソコンを持ち込み、しばらく穂海ちゃんの部屋で仕事をしていると、数時間して穂海ちゃんが目を覚ました。

「…………んぅ…」

「おはよう、穂海ちゃん。」

「…うん」

起きたばかりで、まだ少しぼーっとしているようだ。

穂海ちゃんは、辺りを見渡してから、眠たそうに目を擦った。

「気分はどう?体調悪いとかない?」

「…大丈夫。」

「なら、よかった。僕はもう少しここにいるけど、もう少しお話する?」

そう聞くと、穂海ちゃんは少し考えてから小さく首を振った。

「そう。じゃあ、普通にここにいるね。何か欲しいものとかあったら___」

そこまで言いかけて、俺は胸のざわつきを感じた。

そして、そのざわつきの正体はすぐに現れた。

「…………っ!!」

「穂海ちゃんっ!?」

穂海ちゃんは急に胸を押えて、うずくまった。

発作か……

昨日診断された病名、『大動脈弁逆流症』は、放っておくと、大きな発作で命を落としかねない危険な病気だ。

だから、近いうちに手術をしなければいけないって言ってたんだけど…

まさか、こんなに早く2回目の発作が来るとは思ってもいなかった。

「穂海ちゃん、1回体起こそうね、そしたら息は楽になるから、ゆっくりでいいから体起こすよ~」

ベッドを起こして、穂海ちゃんの背中をさする。

「ゆっくり息しててね、今清水先生呼ぶからね~」

俺は、穂海ちゃんの背中をさすりながら、もう一方の手でPHSで清水先生に電話をかける。

「はい、もしもし、小児科の清水です。」

「清水先生、穂海ちゃんまた発作を起こしました。」

「…まじか。……わかりました、今すぐ行きます。とりあえず今はパニックになられると厄介なので、落ち着かせること最優先でお願いします。」

「了解です」
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