私が恋を知る頃に
コンコンッ

「楓摩、入るよ」

カラカラッとドアが開いて、点滴を持った陽向がきてくれた。

「ごめん、呼び出しちゃって。柚月、ずっとこんな感じで…」

「いやいや、大丈夫だよ。柚月くんも辛いもんな。よし、じゃあ点滴交換するか。」

「柚月、点滴交換するな。痛くないから大丈夫だよ。」

柚月を抱っこしたまま、点滴が繋がった方の手を陽向に差し出す。

「ゃぁ……」

「大丈夫だよ。痛くないし、すぐ終わるからね。」

また少し泣きそうになっている柚月をあやしながら、陽向に合図を出す。

「じゃあ、ちょっとごめんね~」

腕に入れたチューブから針を抜き、新たな針に差し替える。

チューブは刺さったままだから、痛みはないはずだ。

だけど、柚月は怖かったのかまたぐずりだしてしまう。

「よしよし、大丈夫だよ。大丈夫。もう終わったからね、ごめんね怖かったね。」

俺が柚月をあやしているうちに、陽向は手際よく部屋を片付けてくれる。

綺麗になったベッドに、柚月を座らせ、パパっと服を着替えさせる。

着替えたあと、ベッドに寝かせると、やっぱり体がしんどいのか、柚月はすぐに眠ってしまった。

「陽向、ありがとう。助かった。」

「いいえ、お互い様。柚月くん、やっぱり朱鳥ちゃんに似て少し体が弱いのかな、辛そうだよな…」

「うん。よく風邪もひくし、こっちは気が気でないよ。辛そうなのを見るのは、俺らも辛いしな。」

「そうだな。早く良くなりますように。」

そう言って陽向は柚月の頭を撫でてから部屋を出ていった。

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