黒と白の羽
唄を紡いでいた。



大きな声でもないのに



辺りに響き渡った。



騎斗が呆然と鈴羅を見ていた。



昔に一度だけ・・・鈴羅が居なくなる前日に泣いて唄っていた。



それから、鈴羅は唄を歌わなくなったらしい。



騎斗は少し後悔していた。


(草薙が鈴羅の8年間を奪った。そして親友と唄までもを奪った)






鈴羅の歌声は城内にも響き渡っていた。


もちろん、国王たちが入っていった部屋にも聞えた。


騎斗との会話も。



だが、騎斗は忘れていない。



魔王からの命令を。



――ザンッ



緋月を鈴羅の腹部に突き刺した。



「グッ・・・ハッ・・・」



口から、腹部から血が流れ出す。




「鈴羅・・・俺は魔族を導く者。お前と王族が生きる限り・・・殺し続けるからな」



騎斗は後ろを向く。



「だ・・・ったら・・・兄様・・・を・・・止め・・・続けま・・・すよ・・・」



辛うじて立っている鈴羅。



騎斗は振り返らずに消えた。



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