俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
「今年の新人、誰が可愛いと思う?」

とある昼下がりの社内カフェ。クリエイティブ部の同期と営業部の後輩と一緒に昼飯を食っている最中、その話題は始まった。

「うーん、やっぱぶっちぎりで総務の池田さんですかね。可愛いっつーか美人ですけど」

後輩の竹下が意気揚々と答えながら、ランチセットの照り焼きチキンにかぶりつく。そして口の周りを紙ナプキンで拭いながら「昔、読モやってたらしいっすよ」とどうでもいい情報をつけたした。

「あーあの子ね。まあ綺麗は綺麗だけど、〝誘わないでください〟オーラすごくてなあ。俺はもうちょっと親しみやすい子がいいな。マーケ部の鈴木さんとか」

そう話す同期の横瀬の口調は、どことなく上から目線だ。ミートソースの上からフォークでちまちまとグリンピースを弾きながら言う台詞ではないと思うが。

「鈴木さんも可愛いっすね。大学でミスコン出てたらしいっすよ」

「お前どこでそーゆー情報得てくんの?」

そんなふたりの会話を聞きながら、俺は黙々とチリビーンズとチェダーチーズのサンドイッチを頬張る。

正直、四月の風物詩みたいなこの手の会話はもう飽きた。

飲み会なんかで話題に上るのはもちろん、営業先でまで「今年はいい子入った?」なんてスケベ親父から話題をふられる始末だ。

可愛い女の子が気になるのは男の性(さが)だけれど、全部署の新人女子社員を気にするほど普通は暇じゃない。むしろ網羅してるやつは、いったい会社に何をしに来てるのかと。
 
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