俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
 
それは制作会社に打ち合わせに行く、とある日のタクシーの中でのこと。

「えーっ!? 和花ちゃん、彼氏できたの!?」

私は隣のシートに座った営業部員、最上和花(もがみ わか)の衝撃発言に、車内ということも忘れ大声をあげた。

「梓希、声大きい!」

シーっと人差し指を口もとにあてられ、私は焦って自分の口を手で押さえながら「ご、ごめん」と謝った。けれど驚きは収まらず、私は目をまん丸くしたまま和花ちゃんのことをジッと見つめてしまう。

和花ちゃんは私と同期入社の営業部員だ。友達というか戦友というか、私も和花ちゃんも入社以来この業界に日々振り回され、「今日も疲れたね」とクタクタになって笑いながらビールを飲む仲だった。

まだまだ経験浅い新人がこの業界で上手くいかないのはあたり前のこと。そんな痛みも共にわかり合い、「いつかは大きな広告大賞取ろうね」なんて励まし合っていた私と和花ちゃんだったけれど……ここ数ヶ月、彼女はすこぶる調子がいい。

プレゼンの勝率も確実に上がっているし、以前は複数の案件に手こずって常にバタバタしていたけれど、最近は余裕をもってスマートにこなしているように見える。

そして何より、彼女は美人になった。新人特有のやぼったさみたいなのがなくなり、洗練された大人の女の雰囲気を醸し出している。

共に〝疲れた新人〟というカテゴリにいたはずだったのに、いつの間にか営業部員としても女としてもステップアップしてしまった和花ちゃんに、私はここ最近、密かに焦りを感じていたのだ。
 
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