俺様上司が甘すぎるケモノに豹変!?~愛の巣から抜け出せません~
「……周防さん……」
顔を上げると、心底呆れた表情の周防さんの姿が目に映った。どうやら現場から帰ってきたところらしい。
「打ち合わせ終わったらさっさと帰れって言っただろ、馬鹿。それともお前のチームは五時間も六時間もダラダラ話し合ってたのか? ったく」
ビシビシとお説教をしながらも、周防さんはロビーにある椅子まで私を連れていき座らせてくれて、手に持っていたペットボトルのお茶を差し出した。
「とりあえずそれ飲んで待ってろ。課長への報告だけ済んだらすぐに家まで送ってやるから」
そう言って自分の着ていたコートを私に羽織らせると、彼は駆け足で階段を上っていってしまった。
言うことを聞かず無理したあげく結局また迷惑をかけることになって、さすがに猛省する。
(病院にまで送っていってくれたのに、それを無駄にするようなことしちゃった。申し訳ない……周防さん、怒ってるよね)
もらったお茶を飲み喉を落ち着かせながらしょんぼりと反省していると、再び駆け足で周防さんがロビーに戻ってきた。
「ほら、行くぞ。歩けるか」
私の腕を掴んで立ち上がらせながらそう言う声は、思ったほど怒ってはいなかった代わりに心配が滲んでいた。
そのことがものすごく申し訳なくて、私は心の底から自分を馬鹿だと思った。