「だから、話聞いてた?この鎌は、一瞬しかその力を発揮する事が出来ないのさ」。だから、鎖は使わなきゃ、さっきみたいに飛ばされちゃうよ。」
「そっか・・・。」
残念そうな表情を浮かべるパクの顔を、ミルルは見つめていた。
「ごめん・・・。でも、今はこの鎖に頼って生きていくしかないんだよ。」
哀しい口調で謝った。そして、鍛冶屋の娘の性なのか、無意識にパクの鎖をチェックしていた。パクの鎖に少し錆びているところがあった。
「パク。お前、きちんとメンテしてないだろ?その鎖、錆びてるぞ。」
パクの側に来て、鎖を手に持ち細かく確認した。
「ホ、ホントだ。」
「ホントだじゃないよ。いいか、この村では鎖が全てだ。鎖に何かあったら、さっきみたいな事があっても、もう、どうにもする事が出来ない。だから、メンテだけはかかしちゃ駄目なんだ。」
その事はわかっていた。ただ、普通の家庭ではメンテナンスは、その家の家長、つまり父親がするのが常だった。その作業をするべき、父親がパクにはいない。数年前に力にさらわれ、生きているのか死んでいるのかさえもわからない状況だった。だから、メンテナンスはパクがしていた。
パクは母親似だった。手先が器用な父親に比べ、母親はのんびりしている性格で、手先も器用な方ではない。そんなだから、一生懸命メンテナンスをしたつもりでも、なかなかうまく出来ていないと言うのが現実だった。
その事は、ミルルもよく知っていた。
「しょうがねえな。家に来いよ。親父にメンテしてもらうから。」
ふたりは、時間の流れに逆らい、ミルルの家を目指した。
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