ヤンダル以上に職人という言葉が似合う人物は、この村にはいなかった。それくらいに、仕事が出来、また、確実だ。ただ、少し頑固なところがあるのも事実だった。
ミルルと、お茶を片手に工場に向かった。理由は、あの鎌だ。あの鎌の事が、パクは気になってしょうがなかった。
「ねぇ、おじさん。あの鎌、ミルルが持ってた鎌の事なんだけど・・・。」
“鎌”。この言葉を聞いた途端、ヤンダルの表情が変わった。
「その事は、聞くな。いいか、二度は言わない。聞くな。わかったか?」
迫力がものすごい。その迫力は、ミルルの何倍もすごかった。パクは、口をつぐんだ。ミルルの方に目をやると、パクと同じように口をつぐんでいた。
「あぁ、なんかこのお茶ぬるくなったなぁ。パク、新しいの煎れるから来いよ。」
「あ、うん。」
半ば無理矢理、手首を掴まれ台所に連れて行かれた。
< 9 / 79 >

この作品をシェア

pagetop