赤傘
学生時代、太郎はモテた。
でも不思議なことに彼は色んな女の子の告白を軒並み断った。

男ならそのモテように嫉妬するのかもしれない。
でも彼に片思いしている僕は、密かに優越感に浸っていた。

彼の隣は僕のものだっていう、甚だ思い上がったものだけれど。

大学は別々。
それでもたまに連絡は取り合うし会うこともあった。

それが途切れたのは彼が結婚してからだ。

相手は僕の知らない女性。
話題にも登ったこともない人。

子供ができた……と表情の乏しい顔で言った。
僕はじぶんが月並みな言葉で祝福したのか、それとも茶化したのか覚えていない。

その日も雨。
大人になった僕はもうずぶ濡れで佇んだりしない。
人気のない公園で。
赤い傘をさして、こっそり泣いた。
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