転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
◇ ◇ ◇



 満月宮で生活しているといっても、ヴィオラと皇帝の接点というものはほとんどない。皇帝一家の食事にヴィオラが同席させてもらう時くらいだろうか。

 だが、ヤエコが戻ってきたと聞いた翌日、厨房にいたヴィオラを皇帝の使者が呼びに来た。

 政務の合間、休憩をとる皇帝のために焼き菓子を運ぶように命じられたのだ。

「アラム、何がいいと思う?」

「書類を見ながらつまめるものだろうな。俺に聞くより、菓子職人に聞いたほうがいいぞ」

「書類を見ながら、お菓子を食べるの?」

 お菓子を食べるのならば、仕事のことはいったん頭から追い払えばいいのに。

「陛下はお忙しいだろう。会食が入ってなければ、昼食も、仕事をしながらサンドイッチで済ませることが多いぞ」

 そうなのか、とヴィオラは納得した。

 ヴィオラにとっては、食事は楽しみであるけれど、皇帝にとっては栄養をとる以上の役割はないのかもしれない。

「皇帝陛下に持っていくのは、何がいいかしら」

 アラムのアドバイスを受け、菓子職人に向かって問いかける。

「それなら、今日はクッキーかフィナンシェかな? フィナンシェは、一口サイズに焼いてあるんだ」

 菓子職人が出してくれたのは、小さめに焼いたフィナンシェだった。プレーン味、チョコレート味、紅茶味、小さく砕いたクルミを混ぜたもの――その他にも何種類かあるようだ。
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