転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ～次期皇帝と婚約なんて聞いてません！～

　イローウェン王国は、ヴィオラの母国だ。だが、父との仲は良好とはいえないし、継母であるザーラには殺されかけたこともある。

　あまりいい思い出がないので、今さら帰ろうとも思っていないが、おそらくそのあたりのことは、ヤエコは知らないだろう。

　皇妃は事情をよく知っているから、イローウェン王国からヤエコの意識をそらしてくれた。

「私が力になれればよかったのだけれど、私の母国はもうないものね……ジャニス妃の国はどうかしら」

「ええと、ジャニス妃というのは」

「第三位のお妃様。ワナム王国の王族の方よ。ラファエラ妃は、四妃。ティレン王国の方ね」

「妃はまだいるんじゃなかったのか？」

「ティアンネ妃は……離宮にいらっしゃるから。五妃の国は内陸だから、もう少し後でもいいのではないかしら」

　ティアンネ妃は、罪を犯し、離宮においやられたのだが、世間的には病気療養ということになっている。皇帝の妃が他の妃を殺そうとしたなどと世間に知られては、大問題だからだ。