『またね。』
番外編ーif…ー
【佐倉鈴side】
「おはよう鈴」
通学路を歩いているとき。
私は後ろから声をかけられた。
「あ、おはよう輝!」
チリリンと鈴を鳴らしながら輝が後ろからシャーってやってきた。
無事手術も終わって普通の女の子になった私。
手術直前に亡くなった人が心臓を提供してくれた。
だから今、私は輝と幸せにしている。
「今日放課後何するの?」
「ん?別に?」
輝は私が手術終わってから絵を描くことを再開した。
本格的に美術家になりそうな勢いだ。
…輝なら、叶えられる…
叶う瞬間をそばで見ていたい。
輝が自転車を駐輪場に停めて下駄箱に向かう。
私は輝と手をつなぎながら下駄箱で靴を履き替える。
「あ、おはよう卯月」
「おはよう磯ヶ谷くん。」
少し遅れてきた磯ヶ谷くん。
3年生になって輝と同じクラスの磯ヶ谷くん。
…私一人だけ別…
3年連続で同じクラス…いいなあ…
私も同じがよかったよお…
「磯ヶ谷くん…長いなあ…
…武瑠くん?」
「んなこと気にすんな、武瑠でいい。」
「武瑠」
輝は少し嬉しそうに微笑んで照れくさそうに顔を赤らめる。
「…ちくしょう、んな顔されたら照れんだろうが、輝」
磯ヶ谷くんは輝と仲良くしようと歩み寄ってくれてる。
根は優しくて面倒みはいいんだけどねえ…
「なんか照れるね。
ずっと苗字呼びだったのに。」
「だな。鈴ちゃんも武瑠でいいからな。」
磯ヶ谷くん…武瑠はヒラヒラと手を振って先に教室の方へ歩いていってしまった。
「いい人だ。」
輝は嬉しそうに笑って私の手を握る。
「…きっと、前からいい人だったんだよね。」
輝は私の頭を撫でてから静かに手を離す。
…クラス、同じがいいなあ…
まあ、仕方ないか。
「じゃあ。」
輝は優しく笑って教室にはいる私に手を振る。
…寂しいなあ…
私も軽く手を振って机の元へ。
「おはよう鈴!」
「おはよう桃。」
3年生になってから仲良くなった桃香。
私は桃って呼んでる。
名前の雰囲気似てない?
あれ?こう感じてるのもしかして私だけ?
「今日小テストするってー」
「えー」
「鈴は頭いいから出来るじゃん、羨ましい…」
…羨ましいって。
桃だって頭いいのに…
「あれれ?万年学年3位に居る天才はどこかな?」
「ここだよ。」
桃はタチの悪い笑みを浮かべてる。
「それでも、ツートップには負けるよ。」
1位が私。
2位が輝。
3位に桃。
いつ輝に抜かされてもおかしくない私。
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