すれ違いお見合い結婚～相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~

「わぁ、マルすっごく可愛くなったね！無理言ってあいちゃんに頼んで良かったよ、ありがとう」

トリミングが終わる少し前に戻ってきた圭介は綺麗にカットされたマルを見てテンションが上がったようで、マルを抱きしめるとすりすりと頬擦りしていた。
その様子を出来るだけ笑顔で見ていたのだけれど、やはり顔が強張っていたのか圭介は藍里を見ると苦笑してしまった。

「……あいちゃん、僕には無理して笑おうとしなくてもいいんだよ」

「そんな……無理になんて……」

否定するように小さく首を横に振るけれど、圭介の表情は変わらない。
そして、暫くじっと藍里を見つめてから首を傾げた。

「あいちゃん、さっきも思ったんだけど……一年前より大分痩せてない？ちゃんと食べてる？」

「え……と、食べて、は……います」

視線をさ迷わせながら答えると、何かを察した圭介は少しだけ身を屈めて藍里の視界に無理矢理入るように顔を近付けた。

「っ！！」

「あいちゃん、何かあったら何時でも相談していいからね？智大のことでも、それ以外でも……」

あまりの近さに驚き、目を見開いて後退りながら何度も頷くと背中に何かが当たった。
咄嗟に後ろを振り返ると、そこには目が笑っていない先輩が笑顔で仁王立ちしていた。