すれ違いお見合い結婚~相手は私を嫌ってるはずの幼馴染みでした~
「そんな理由で死なれたら困るな」

「と、智君……!?」

顔だけ振り返ってみればソファの上にいつの間にか智大が乗っていて、藍里は背中を智大に跨がれて体重をかけないように気を付けながら密着されている状態だった。
さっきまでの悲しそうな顔はどこへいったのか、今はどこか強気な表情をした智大が笑みを浮かべていた。

「良かったな、ファーストキスはちゃんと覚えてて」

「ん……っ」

「指輪もなくしてなくて良かったな?」

「……っ………や……!」

言いながら露出している肩や背中を指先で撫でられ、藍里はビクッと体を跳ねさせながら恥ずかしさで潤みはじめた瞳で智大を睨んだ。

「い……いじわる……っ!」

「褒め言葉として受け取っておく」

少しも褒めてない!と言いたかったが、その前に智大が背中にそっとキスをしてきたので藍里は文句を言えずに、ひゃあっ!と小さく叫んだ。

「一々反応が可愛いな」

「う……」

「藍里……今度……」

甘い声と瞳と空気に藍里はこのまま流されてしまいそうになったが、智大が何かを言いかけた時に智大のスマホの着信が鳴り響きハッと我に返った。

「電話……!大事な用かも……!」

「……そうだな」

智大は溜め息混じりに返事をすると、藍里の上から退いてテーブルの上に置いてあったスマホを手に取っていた。
その間に藍里はそそくさと逃げるように浴室に行き、湯を張りながら両手を頬に当てた。

「あ……ぶなかったぁ……」

電話が鳴らなければそのまま……とあらぬことを想像してしまい、藍里は思いきり顔を横に振って今想像しかけた物を頭から追い出そうとするのだった。
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