生簀の恋は青い空を知っているか。

「……なんか、他人の家で暮らすの疲れるかも」
「他人って、二人の家でしょう? 婚姻してるんだから」
「わたしの中では、あそこは浅黄さんの家って感覚なんだもん」

なんだもん、なんて言われたって困るだろうけれど、言わせてほしい。

「浅黄さん、何考えてるのかよく分かんないし……」
「それって、松葉は知りたいってこと?」
「うん?」
「浅黄さんが何を考えているのか、分かりたいから疲れてるの?」

目をぱちくりさせる。鼎の言葉がすっと落ちてきた。

確かに、分かりたいという気持ちはある。

「気になるなら訊いてみれば良いじゃない」

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