生簀の恋は青い空を知っているか。
いや、浅黄さんのことなんて最初から少しも分かったことなんてない。
「顎、離してください」
「ん」
手が離れていく。わたしは続けた。
「菊池さんが謝ったのは、たぶんわたしが断ったのに送ってくれたことだと思います。別に何か意地悪をされたわけじゃないです」
「そうか」
「分かりました?」
「半分」
寧ろ何が半分、分からないのか。
問い質そうと顔を上げると、ちゅ、と唇が重なる。不意打ちだった。
惚けた顔で肩を竦めている。
「ま、君の機嫌が直ったならそれで良い」
「何も良くない気がします……」