生簀の恋は青い空を知っているか。
ぐずぐずと鼻を啜るわたしの横で、こちらを向く気配を感じる。
「ずるいのは君の方だろ」
「なにがですか」
「泥酔すると記憶なくすところ」
「お酒、一滴も飲んでないですよ……?」
パーティー会場で浅黄さんの隣を片時も離れなかったので、それは知っているはずだ。勿論運転してくれた浅黄さんも一滴も飲んではいない。
腕を組んで、やはりこちらを見ていた。
エレベーターの浮遊する感覚に、少しだけ怖くなって、視線を下げた。
「今日の話じゃない」
「……いつの話ですか?」
浅黄さんの前でお酒を飲んで記憶をなくしたのって、わたしの誕生日以外に思い出せない。