生簀の恋は青い空を知っているか。

頭の中で、危険信号の赤が点滅する。キスをされたときには感じなかった、危険信号。

「ちょ、や」

するりとお腹の方に手が回る。服の上からそれを止めるけれど、無駄だった。

「わたし、ドラマを見ないと、いけないので」
「ドラマ?」
「そう、富山さんの出てる」

ぷち、と何か音が聞こえた気がした。
切れる音ではなく、踏み抜く音。

地雷を。

「そうか」

浅黄さんの声が営業の声色まで上がった。それに恐怖が増して、振り向くに振り向けない。

お腹の回った手が遠慮なく上に上がるのも同時だった。

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