生簀の恋は青い空を知っているか。
外は明るくなり始めている。じわりと視界が滲む。
この人のこと、全然分からないし、ひどいことも言ってくるけれど、心底嫌いにはならないのは、この人はきっとわたしのことを本当に連れ出してくれると思うからだ。
息をし辛そうだと言ったこの場所から。
わたしを掬い出してくれると、そう思ったから。
気付けば朝になっていた。部屋の中は明るくて、隣に浅黄さんはいなかった。
寝室を出て広い廊下を歩いた先にリビングがあった。
……ここ、何階なの。
リビングのはめ殺しの窓から見える景色に、目を奪われる。
「高所恐怖症か?」
後ろから聞こえた声。