生簀の恋は青い空を知っているか。

ワイシャツを……というかスーツを着ている。

「高いとこは、好きです」
「猫か」
「出勤ですか?」

今日は日曜だけれど。
リビングを見回すけれど、カレンダーがない。というか、そういう生活感のあるものがひとつもない。

「社長秘書の代打。なんか、はれてるけど」

ふと窓の外に目をやった。そんなに晴れてはいない。
もうすぐ梅雨明けするとは聞いているけど、まだ今日は雨が降りそうだ。

「君の目の方な」

つん、と通りがかったところで瞼を突かれた。瞼の下に眼球があることを知らないのだろうか……ちょっと痛い。

< 26 / 331 >

この作品をシェア

pagetop