生簀の恋は青い空を知っているか。
話し合う必要なんて、全然ないのかもしれない。わたし達の間にあるのは言葉でも思いでもなく、契約だ。
じゃあその契約のメリットは?
わたしの方にはあっても、浅黄さんにあるとは到底思えない。
「どうして、浅黄さんは結婚を承諾してくれたんですか?」
ちょうどエレベーターが来て、開いた。先に入った浅黄さんがボタンを押してこちらを見る。
すぐにわたしも乗り込んだ。
扉が閉まって、エレベーター独特の音に包まれる。
壁に寄り掛かっている姿がどこかで見た俳優の写真集のようだ。その俳優様の言葉を待つ。