生簀の恋は青い空を知っているか。
「俺もそっち側にいたことがある」
「浅黄さんが?」
「ああ、それで助けられた」
ポーン、と音が鳴って扉が開いた。
高層階用のエレベーターらしく、どの階にも止まらずに一階まで来られた。
浅黄さんの後に続いてエントランスを歩いていく。
「行ってらっしゃいませ」と声がしてぱっとそちらを見ると、噂のコンシェルジュがいた。
「行ってくる」
さらりと浅黄さんが返して、私も目が合ったので会釈をすると、上品に会釈が返ってくる。
外に出ると、湿度の高い空気に包まれた。辛うじて気温は高くないけれど。
梅雨は長くなりそうだ。