生簀の恋は青い空を知っているか。

夕方に父が来て、夜に浅黄さんが来て、両親が揃って帰った。

「……父に怒られました」

「お前たち兄妹はどうして親に心配をかけるんだ」と理不尽な怒り方をして、母に宥められていた父。
お兄ちゃんが起きたときは雷が落ちるだろうな。

浅黄さんがぼーっとこちらを見ている。
顔に涎でもついているのか、と頬を拭ってみる。

「何かついてます?」
「君の目と口と鼻が」
「眉毛も忘れないでください」
「こっちおいで」

行くより先に浅黄さんが背中を抱き寄せてくれる。温かい。

「一週間分、気が変になるかと思った」

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