生簀の恋は青い空を知っているか。
耳元で聞こえる声。
「夜、ずっとついててくれたって聞きました」
「夜だけじゃない。仕事してる間もずっと、おかしくなるんじゃないかって……」
「すみません」
わたしはきっと誰よりも今、楽天的な考えをしているに違いない。
多分こういうの、渦中にいる当人が一番状況を判断できていないんだと思う。
身体を離される。
深く溜息を吐かれた。
「……夢の中で綺麗な青い鯉を見たんです」
わたしをこちら側へと導いてくれた鯉。
そういえば、あの日の昼も鯉の話をしたな、と思い出す。
「もしかしてあれ、浅黄さんでしたか?」