生簀の恋は青い空を知っているか。

事故に遭ったときに放り飛ばされたようで、携帯には細かい傷がついていた。充電して電源をいれる。

理美から数件の着信。そうだ、理美にお兄ちゃんのことを話そうと思って電話をした。

横断歩道を渡る途中、撥ねられた。

アスファルトの冷たい感覚を思い出して、ぞくりと背中が震える。携帯を抱きしめる。

ちょうど携帯が震えた。見ると理美からだった。

「あ、もしも」
『もしもし、松葉ちゃん!?』

耳元に当てなくても聞こえる程の声量。思わず携帯を遠ざける。

『目が覚めたって鼎から聞いて……』

泣きそうな声に、こっちが何故か泣きそうになる。

< 309 / 331 >

この作品をシェア

pagetop