生簀の恋は青い空を知っているか。
事故に遭ったときに放り飛ばされたようで、携帯には細かい傷がついていた。充電して電源をいれる。
理美から数件の着信。そうだ、理美にお兄ちゃんのことを話そうと思って電話をした。
横断歩道を渡る途中、撥ねられた。
アスファルトの冷たい感覚を思い出して、ぞくりと背中が震える。携帯を抱きしめる。
ちょうど携帯が震えた。見ると理美からだった。
「あ、もしも」
『もしもし、松葉ちゃん!?』
耳元に当てなくても聞こえる程の声量。思わず携帯を遠ざける。
『目が覚めたって鼎から聞いて……』
泣きそうな声に、こっちが何故か泣きそうになる。