生簀の恋は青い空を知っているか。

それにホッとして戻す。浅黄さんがじっとこちらを見ていた。

「見せろ」
「え、嫌です!」

鞄を取り上げられそうになるのを必死に抵抗する。声が煩かった為、看護師さんがやってきて注意された。

「他の患者さんもいるので静かにしてください」
「すみません……」

浅黄さんに睨まれたけれど、わたしの所為では断じてない。
面会時間はすぐに終わり、浅黄さんが立ち上がる。

「また明日来る」
「仕事忙しいなら無理しなくても……」
「明日来る」
「……はい」

帰ってしまうと、わたしはすることがなくなってしまった。

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