生簀の恋は青い空を知っているか。
松葉杖をついてベッドから立ち上がる。
「松葉杖、難しい……」
「松葉ちゃんの名前入ってるね」
「松葉みたいな形してるからでしょう」
「え、どこらへん?」
「ここ」
鼎が杖の二股に分かれた場所を指す。ふうん、と理美がそれを見て頷いた。
お嬢様二人に荷物を持たせて、わたしは病室を出た。本日、休日出勤の浅黄さんに代わって来てくれた。
「じゃあ挨拶してくるから、先に車に行っててね。よろしくお願いします」
母がひと足早くエレベーターに乗っていく。
かつんかつんと床を鳴らしながら、わたしもゆっくりと進む。