生簀の恋は青い空を知っているか。

理美がボタンを押してくれる。

次に来たエレベーターに乗り込んだ。三人だけの空間。

「お兄ちゃん、睡眠導入剤とアルコールの多量摂取で、今植物状態なの」

二人の方を見る。理美が既に涙目だった。

「ずっと言えなくて、嘘吐いてて、ごめんね」

最初からちゃんとそう言っていられれば、ここで言うこともなかった。

ぎゅっと右の肩に鼎がしがみつく。わたしはよろけて、反対側の肩を理美に掴まれたことで立っていられた。

「こっちこそ、ごめんね。もっと早くに聞いてあげられなかった」

その言葉を聞いて、やっぱり泣いた。

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