Hate or Love?愛と嘘とにまみれた世界の片隅で
取っ組み合いになっても、いくら不利でも、ここで負けるわけにはいかない。


聖に拳銃を奪われるわけにはいかない。


絶対にこの手を離してはいけない。


「翔早く!!ねぇ!!早く玲香を連れて逃げて!あたしもう嫌なの!!嫌なんだよ!目の前で人が死ぬのが…っ!大切な人の死を見るのが嫌なんだよ……!!」


力の限り叫んだそのとき、手の力が一瞬抜け、拳銃を奪われてしまう。


「ダメ!!」


タックルするように聖に飛びかかり、再び拳銃を握りしめる。


重なる聖の指先は人のものとは思えないほど冷たい。


「離せって言ってんだろ!!沙耶!!」


「離さない!!翔早く!」


あたしの気持ちは届いた。


翔にだけかもしれないけど、届いた。
< 402 / 406 >

この作品をシェア

pagetop