焚き火
曇りが10日ほど続いた頃でしょうか。
バチバチパチパチと音が聞こえました。
私は十字になった木に、
手と足を太い釘で打ち付けられていました。
ギュッギュッと私が何もしなくとも、
重力のせいで肉が伸びてゆくのが分かります。
継続して鈍くも鋭くもある痛みは、
彼らの目に潤いを与えていました。
歓喜の、黄色い声が私のもとに届きます。
始めての体験でした。
私が産まれてすぐに母は死んだそうです。
父はそんな私をとてもとても可愛がってくれました。
毎夜、頬を赤らめた父は私の身体を弄り、
少しでも抵抗しようとすると圧倒的な力と高圧的な態度で私に恐怖を与えてきました。
「天使のようだね。」
「女神様からこの上ない恩恵を受けたんだね。」
と気持ちの悪い言葉で私を汚してゆきました。
そんな私が、十字の木の上で、
「悪魔だ!」
「邪悪な存在だ!」
と黄色い声を浴びています。
ビチッビチッと肉が剥がれていく音が頭の中に鳴り響きました。
下を見ると焚き火をしているのか大きな炎がありました。
パチパチバチバチと私に迫ってくるのが分かります。
より一層、黄色い声が大きくなった気がしました。
焚き火はとても落ち着きますね。
目に優しく燃える火、パチパチバチバチと私を歓迎してくれているようです。
温かいですね。
冬の寒い日ですから、
皆は私で暖を取っていました。
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