144本のバラの花束を君に

イギリスといえば、文学ならシャーロック・ホームズやハリー・ポッター。スポーツならクリケット。食べ物ならスコーンやローストビーフ。世界遺産なら、ウェストミンスター宮殿やバース市街。素敵なものであふれている。

素敵なものを見たり、紅茶を楽しむことも静音は楽しみにしていた。しかし、それ以上に静音が心待ちにしていたことがあった。

「Eric！！」

静音は頰を赤らめ、金髪緑眼の男性のもとへ走った。グレーの落ち着いたデザインのスーツを着て、百八十センチほどの長身の男性が立っている。

「How have you been？（元気だった？）I wanted to meet you for a long time.（あなたにずっと会いたかった）」

そう言って静音は彼氏のエリック・バーノンに抱きつく。人の視線をちらりと静音は感じるが、今はそんなことどうでもいい。

エリックとは、静音が高校生の頃に留学した時に出会った。静音の方からアプローチをし、付き合うようになったのだ。