実験室の幽霊 〜真夜中の電話〜

「まあ、就労中に事故で死んだのはその一件だけだけど、ウチの研究所には屋上から飛んじゃった人とか、自宅で亡くなった人とか、いろいろいるから。」
「屋上からって、自殺ってことですか?」
「たまに居室を歩いてたり、事務棟の階段上がって行くのを見かけるらしいよ。」
「え?誰が誰を見かけるんですか?」
「回路設計部にいた人。メガネの男性でね、同僚だった人とすれ違ったりするらしい。」
「その自殺した人がですか?」
「そう。」
 僕は思わず口をつぐんだ。天野さんの話によれば、怪談は4~5種類あるらしい。建設工事中の作業員の事故死。鬱になった研究員の衰弱死。数十年の歴史がある研究所ならば、事故や病気で不遇の死を遂げた人はそれなりにいる。


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