クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
゛Pouding adulte゛とカフェラテを堪能した和生は、

「愛菓さん、来週の日曜日の約束は覚えていらっしゃいますよね?」

「ええ、慰労会ですよね」

月初めの今日は火曜日。

記念すべき開店初日だ。

゛favori crème pâtissière゛の定休日は月曜日と決めていた。

このお店のメインパティシエールである愛菓は定休日のみの休みとしているが、白人と阿左美は週休2日。

どちらかが勤務の時に交代で休むように調整している。

和生は愛菓にも週休2日をとるように説得をしたが無駄だった。

「軌道に乗るまではダメです」

侍愛菓は一度言い出したら聞かない性格だと、さすがの和生もこの一ヶ月で悟った。

「月曜日はお休みです。だから、日曜日は21時きっかりでお店を閉めてくださいね。約束ですよ」

「そんなに気を遣って頂かなくても、スイーツが癒しになってるのに・・・」

「愛菓さん・・・!」

「・・・わかりました、よ」

はぁ、っとため息をついた愛菓と和生の周りにはいつの間にか人垣が消えていた。

漂うブリザードに、皆、逃げ出したのだ。

「それでは、また明日、この時間に参ります」

和生はブリザードを弱めながらも、シベリアンハスキーのような無表情さをそのままに、゛favori crème pâtissière゛を後にした。

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