クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「時間通りですね」

「・・・誰かさんが脅してくれたお陰ですよ・・・」

「ん・・・?」

店の奥の更衣室で私服に着替えた愛菓は、白いカッターシャツに紺のデニム。

「愛菓さん、今日は食事に行くと伝えませんでしたか?」

「ええ、伺ってますよ。でもドレスコードがあるとは仰ってませんでしたよね?」

長いストレートヘアをシニヨンに束ねていたゴムを外し、愛菓はフルフルと首を振る。

長い髪がサラサラと宙を舞って綺麗だ。

そういえば、和生と愛菓が出会ったあの日も同じ仕草をしていた。

「和生殿?行きましょうか」

「ええ」

愛菓が店の鍵を閉めるのを見届けてから、二人は歩き始めた。
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