クールな専務は凄腕パティシエールを陥落する
「今日も゛Pouding adulte゛とモカブレンドコーヒーでよろしかったですか?」

レモン水の入ったグラスをカウンターに置くと、冷たい微笑みで愛菓は言った。

゛Pouding adulte゛

フランス語で゛大人のプリン゛

愛菓が手掛けたそれは、二人が出会ったときの想い出の品とも言える。

甘さを押さえたカスタードに苦味が特徴のカラメルソース。

甘いものが苦手な大人にもカスタードの魅力を知って欲しいと思って考案したものだ。

お陰さまで゛Pouding adulte゛は、◯ンドセレクション金賞にも選ばれた商品で、愛菓の代表作ともいえる。

「ええ、そちらでお願いします」

樫原は、2週間前から、定休日以外は毎日この店を訪れる。

14時キッカリ。

寸分も狂いのない正確な訪問は、愛菓だけでなく、優吾や佐藤夫妻にとっても見過ごすことのできない事態となっている。
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