同じ人を好きになるなんて
リビングのソファに座っていたはずの陸斗が私の後ろに立っていた。

「え?わ、私そんなこと言ったっけ?」

とっさにはぐらかした。

だってなんていえばいいか考える余裕もなかったからだ。

だけどそんなごまかしは陸斗には全く通用しない。

「じゃあさっきの岡上って男はまゆりの何なんだ」

「……友達かな」

曖昧な返事に陸斗の表情が曇る。

「友達?だったらなんで電話が来たのにわからないんだよ」

痛いところを突かれた。連絡先も知らないのに友達っていうのは間違いだと陸斗に言われて気づいた。

何も言い返せず黙り込む私に陸斗は大きくため息を吐いた。

「まったく……いつもお前は顔に出過ぎるんだよ。別れ話を出された時だってそうだ。まゆりが『別れたい』って言いながらも顔は別れたくないっていうのが手に取るようにわかったよ……」

なんで昔のことをむ仕返そうとするの?

私たちはもう過去には戻れないのよ?

あの時本当は別れる気は無かったって言ったらどうにかなるの?

なるわけないじゃない。

私たちはそれぞれ別の道へ進んだのよ。

そして陸斗にはりっくんっていう子供だっているのに……

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