同じ人を好きになるなんて
信じられなかった。

陸斗も同じような気持ちでいたの?

「うそ……でも––」

「まゆりはどうなんだ?こんな大粒の涙を流しても俺から離れたいのか?」

私にはまだ迷いがあった。

だってもしここで本心さらけ出したらもう後には引けない。

りっくんのことも奥さんの……ことも。

それを私は全て受け止めることができるの?

「まゆり?」

どうしよう。でももう……誤魔化せない。

もう自分の気持ちに嘘はつけない。

「ずるいわよ。私はもう二度と好きにならないって決めていたのに、あなたは私の気持ちなど考えずズカズカと私の心に棲み着いて……この5年忘れたくても忘れられなかった。だけど陸斗は––」

聞きたかった。

陸斗の奥さんのことやこれからのこと。

だけどそれは陸斗の唇で塞がれた。
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