同じ人を好きになるなんて
お迎えの時間になり出かけようとすると凛子さんも一緒に行くといった。

「理人は本当に幸せ者ね。みんなに愛されて……」

「そうですね。でも今からちょっと面白いものが見れるかもしれませんよ」

「面白いもの?」

「はい」

今日はお別れ会があるからきっと女の子たちがわんさか集まっているだろうと予想していた。

そして保育園の門をくぐると私の予想は見事に当たった。

「何あれ?」

凛子さんが驚いた様子で前方を見ている。

「りっくんは保育園のプリンスなんですよ」

「プ、プリンス?」

りっくんは女の子たちに囲まれていた。

「絶対帰ってきてね」

「私待ってるから」

「わたしも一緒に行く〜」

大人顔負けの熱烈なラブコールにりっくんはタジタジだ。

しかも大きな紙袋が2つ。おそらくプレゼントだろう。

「我が息子ながら恐るべし」

凛子さんは口に手を当て唖然としている。

するとりっくんが私たちに気づいた。

満面の笑みを浮かべ私たちに手を振る。

すると凛子さんは「ちょっと先生とお話ししてくるわ」といって職員室の方へ向かった。

担任の先生も私に気付き頭を下げた。

「今までお世話になりました」

「いえ、りっくんがいなくなるってみんな寂しがってて今日は泣いちゃう子もいたんですよ。将来大物になりそうですね」

私は大きな紙袋を持った。

するとりっくんはみんなにとびきりの笑顔で「ありがとう」と最後のお別れをした。
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