同じ人を好きになるなんて
その時だった。

「須藤さん?」

「え?」

顔を上げるとそこに立ってたのは岡上社長だった。

私は雑誌を椅子の上に置くと慌てて立ち上がった。

「その節はせっかくのお誘いをお断りして申し訳ありませんでした」

私は深々と頭を下げた。

「頭をお上げください。そのことはいいですよ。ところで座っていいですか?」

ふと陸斗の顔がよぎった。

俺以外の男と話すなとかいってたけどこれは示し合わせたわけではなく偶然なんだからセーフでしょ。

「ど、どうぞ」

岡上社長は私の真向かいに座った。

「ところで今日はどうされたんですか?」

超がつくほどの有名企業の社長さんがなぜとおもったからだ。

「今日は売りの会社のイベントをここのモールに1階でやってるんですよ」

岡上社長はコーヒーを飲むとニコッと私に笑顔を見せた。

「あの……あれから新しい秘書さんは見つかりましたか?」

断った手前気になっていた。

だが岡上社長は首を横に降った。

「いたらこんなところで油売ってませんよ。もしかして……やる気になってくれた?」

私は首を横に降った。

「すみません」

「わかってますよ」

そしてしばらく沈黙が続いた。

決して長い時間ではないがなんとも居心地が悪かった。

先に声をあげたのは岡上さんだった。

「間違ってたらごめん。もしかして須藤さんって彼氏ができた?」

「え?」

「図星だ〜。ちなみにその彼氏というのは意外と仕事先の人だったりして」

ぶっ

吹きそうになった。

透視でもされていたのだろうか当たっているだけに言い返せない。
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