同じ人を好きになるなんて
恥ずかしくて下を向く私に岡上社長は「でもいい顔してる」と言った。

びっくりして顔を上げると岡上社長は話を続ける。

「前にあった時は何かに落ち込んでるような感じがして……そこにつけこもうとしたんだけど……今はいい顔してるから充実してるんですね。なんか悔しいけど」

社長だから人を見る力があるのか、はたまた私が顔に出すぎているのかはわからないがとにかくバレバレだった。

「確かにあの時の私は迷走してました。でも今は……充実してます」

すると岡上社長はわざとらしく大きなため息を吐いた。

「そこまではっきり言われると……あきらめざるを得ないな〜」

「あっ……すみませ––」

バッグの中のスマートフォンから着信音が流れた。

チラッと岡上社長を見ると出ていいよと言ってくれた。

私はペコっと頭を下げスマートフォンを確認した。

電話は陸斗からだった。

遠慮しがちに電話に出る。

「もしもし」

『まゆり、今どこ?』

「どこって……今ショッピングモールにいるけど何かあった?」

すると陸斗はせっかくの土曜日なのに私を一人にさせてるのが申し訳なくて急いで仕事を終わらせ家に帰ったら私がいなかったから不安になって電話をかけたというのだ。

すると目の前の岡上社長と目があった。

「もしかして……彼氏?」

岡上社長に尋ねられ一気に顔が火照った。

「可愛いぐらいにわかりやすい」

岡上社長がわざと大きな声で言った。

それに反応したのは私ではなく電話越しの陸斗だった。

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