君がキライなそのワケは
それから数日後。
終業式が終わって、明日から夏休みっていう日。

学校から帰ると家の前に陽太君がいた。

「おかえり」

そう言っていつもの様に微笑む。
だから私は『ただいま』ってとびきりの笑顔で返す。

「今日も可愛いね」

って突然、私の頬に触れるだけのキスをした。

いつもは頭をポンポンってするだけなのに。
少し驚いたけど、きっとこの前のプロポーズを受けたからかなって納得した。

「あのね、涼介が『陽太君とはまだ結婚できない』って言うの。そんなの私だって分かってるけど……」
「大丈夫だよ」

そう言ってから陽太君はいつもの様に、私の頭優しく撫でてくれた。

「涼介が言ったのは法律の話さ。法律はボク達の愛の深さを汲んではくれない……愛には年齢なんて関係無いのにね」

愛。その言葉の重みが私には分からなかった。
プロポーズだって、初めて経験するロマンチックな言葉の響きにのぼせ上がっていただけだったし。

「う、うん……」

その日の陽太君は始終熱があるような表情だった。

「そうだ」

とびきり素敵な事を思いついた、という声で私の肩に手を置いて囁く。

「これから結婚式しようか……二人きりで、さ 」

肩がズシリ、と重くなった。


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