俺の、となりにいろ。

桐谷秀人は彼女へ少し目を細めて「あぁ」と返事をすると、私と目線をあわせた。
何か言いたそうな、困った顔をしている。

……何故、そんな顔をするの?

多分、数秒間の沈黙があったと思う。
その静寂を破ったのは、仲本桜子だった。

「桐谷課長、みんな待ってるみたいですよ」

仲本桜子は桐谷秀人を見つめ、桐谷秀人は私を見つめ、私は……「へのへのもへじ」を見つめていた。

桐谷秀人は両肩で大きなため息を吐くと、仲本桜子の方へと歩き、二人で備品室から出ていった。
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