俺の、となりにいろ。

しかし玄関を目の前にして、私は中へ入ることが出来なかった。
あの「へのへのもへじ」の張本人が、全身ずぶ濡れで玄関の前で座り込んでいたからだ。

「…なんで、いるんですか?懇親会は?」

ザーッと雨音で、私の声は聞こえているのか疑問だが、真っ直ぐな切れ長の瞳は確かに私を捉えていた。

「寒い。早く中に入れて」

少し震えているように聞こえる声に、仕方なく施錠を解いた。
桐谷秀人が先に中に入り、私もその後ろに続いて内側からカギをかけた。
二人で立ったままの玄関は、かなり狭い。
「タオル、持ってくる」
と、私は部屋に上がろうとした。

腕を、掴まれた。

振り向いた私に、濡れた黒髪から雫がポタリと落ちる、彼と交わる視線。前髪の隙間から覗く、吸い込まれそうな瞳に、ゾクリと背中が震えた。
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