俺の、となりにいろ。


「タオルより、咲がいい」

引き寄せられて、長い両腕が背中に回りグッと力をこめる。
濡れたスーツに抱きしめられているのに、背中から感じる腕も、ワイシャツ越しの胸板も、桐谷秀人の体温が衣類を通して伝わってくる。

しかし、同時に他のものが、伝わってきた。

恋しい相手に七年ぶりに抱きしめられて、嬉しいはずなのに。
どうしても許せない「それ」に、私は仕方なく彼の胸をトントンと、軽く叩いた。
首筋に顔を埋めていた彼も「ん?」と、顔を私に寄せた。多分、私の顔の表情で、困っていることが分かってくれたかもしれない。

「どうした?」

柔らかい、色気のある声に、ドキドキが止まらない。
その声にうっとりするところを、グッと耐える。
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