俺の、となりにいろ。
確か、今の営業部は成瀬部長が責任者だったか。
愛妻家で有名な成瀬部長は普段は穏やかな人だが、営業の仕事については鋭い感性と巧みな話術の持ち主である。
成瀬部長は七年前は課長だった。
たから、あの出来事は全て知っているはずだ。
なのに、なぜ…。
「言っておくけど、セクハラ事件のことを聞いたのは、私だけじゃないわよ。桐谷くんにも聞こえてたはずよ。彼もそれを聞いて呆れて首を横に振ってたもの。きっと、あなたを軽蔑したのね」
仲本桜子は秀人を「桐谷くん」と呼んだ。
そして、余裕な笑みを浮かべて、身長の低い私を見下ろした。
「上司を陥れる野蛮な人を、桐谷くんが相手にするわけないでしょ。あなたが近づけば、彼も迷惑するの。彼に近づくの控えて欲しいわ」